Bean to Bar・チョコとコーヒーの関係
ゲスト:Bon Vivant オーナーパティシエ・久保健寛さん
2010年の創業から15年。円山の洋菓子店「Bon Vivant」のオーナーパティシエ・久保健寛さんをゲストに迎えます。フランス伝統菓子を軸に据えながらBean to Barにも取り組む久保さんと、カカオとコーヒー、素材の源流から手をかけるふたつの世界に通じる哲学を語り合います。発信することで自分の思考が整理されるという、noteを始めた理由も。
書き起こし
Vol.7「Bean to Bar・チョコとコーヒーの関係」本編の会話を、読みやすく編集してお届けします。(聞き手:鈴木謙太郎/川筋愛友、ゲスト:久保健寛)
ゲスト・久保健寛さん/Bon Vivant
今回のゲストは、円山の「Bon Vivant(ボン・ヴィヴァン)」オーナーパティシエの久保健寛さん。2010年創業、3年前に今の円山の場所に移転されました。お店の紹介を。
フランス菓子のお店だと思っています。テーマは「クラシックモダン」で、クラシックの部分をすごく大事にしていて。フランス菓子でありながら、チョコレートのBean to Barにも取り組んでいます。
Bean to Barとは
Bean to Barって、何ですか。
カカオを、皮のついた豆の状態で問屋さんから仕入れて、ローストからスタートするんです。やることが、コーヒーとほぼ一緒で。低温で長めに焼くとフルーティーさを残せる、というのもコーヒーと同じ。ローストしたら皮を取り除いて——機械で分別しきれない分は、みんなでテーブルに広げてピックするんですけど、これもコーヒーと一緒で。潰したのがカカオニブで、それに砂糖を混ぜて、石臼で36〜48時間回し続けると、チョコレートになります。多くのお店は、クーベルチュールという完成したチョコレートの状態で仕入れて作るので、豆から作るのは、北海道ではまだ少ないですね。
本当に、自家焙煎と一緒ですね。
チョコレートの熟成と、味の決め方
特徴の出し方は、回す時間、ローストの温度・時間、砂糖の種類。ただ選択肢が多すぎるので、ローストの温度と時間はどの産地も揃えて、カカオも70%で全部揃えています。回す時間は、味見しながら「ここがいい」というところで止める。カカオ豆は時間が経つほど味が変わるし、チョコレートにしてからも変わるんです。真空で保存して、開けたてのウイスキーが徐々に丸くなるように、角が取れていく。だから、いわゆる生ケーキには全部は使えなくて。美味しいチョコレートは、できるだけシンプルに、そのまま食べていただくのが一番美味しいと思っています。
noteを始めた理由
最近noteで発信を始められましたよね。なぜですか。
移転で大きな借金を抱えて、売上をもっと上げなきゃいけない。その中で、ものを作ることへの情熱みたいなものを、自分でもう一度整理したくて。言葉にすることでモチベーションを上げたい、仕事をもっと楽しみたい、と。お店の宣伝としてのインスタとは別に、職人である自分を出す場、という感じですね。実は文章を書くのがすごく苦手で、帰り道の車の中でボイスメモに落とし込んだものを、ChatGPTに関西弁交じりで文章にしてもらっているんです(笑)。
職人であること、手間をかけること
フランス菓子の業界にも危機感があって。働き方改革で、長時間労働が当たり前だった世界が変わって——それ自体は大事なことですけど、技術を教える時間も、習得する時間もない中で出来上がるものは、質を追う方向には行きにくい。ひと手間二手間かけて美味しいものを作ってきた身としては、そこは省いちゃダメでしょう、と。でも、これって大きな声では言えないんですよね。
なんで僕ら、こんなに苦労が好きなんだろうね(笑)。でも、人じゃないとできない領域がある。試行錯誤する過程も、失敗することも大事で。久保さんの「楽しい世界なんだから、そんなちょっとで諦めないで、もっとやってみろ」というのが、かっこよすぎて。
お菓子とお酒、食べる温度帯
お菓子を選ぶ時、合わせるもののヒントを教えてもらえますか。
組み合わせは、正直、僕から提案するのは難しくて。コーヒーでも紅茶でも牛乳でもいいし、お客さんが食べたいシチュエーションで選んで楽しんでもらうのが一番かなと。それよりは、食べる温度帯を気にしてもらうと面白いです。チョコレートケーキも焼き菓子も、要はバターの塊なので、冷蔵庫から出したてより、常温に10〜15分戻したほうが、口の中での広がりが全然違う。焼きたてのマドレーヌがめちゃめちゃ美味しいのと同じで。フォークを刺す抵抗が、明らかに少なくなると思いますよ。
それ、いいこと聞きました。もののポテンシャルを引き出すのは、温度なんですね。
B-Side NOTES ― ホテル・ザッハー(ウィーン)
近々、福岡に行く予定で。福岡のコーヒー屋さんといえば、東京のカフェ・ド・ランブルの流れをくむ「珈琲 美美(びみ)」さん。それはそれはかっこいいお店で、行きたいなと。あとは、自家焙煎で有名な「Coffee County」さんも。
今回紹介するのは、ウィーンの「ホテル・ザッハー」。ザッハトルテ発祥の、オリジナルレシピが食べられるお店で。実は、公式オンラインショップから買えるんです。木の箱に入った6カット分のホールケーキで80ユーロほど、しかも世界中どこでも送料無料。僕、年に2回ほど注文しています。正直、そんなに美味しいわけじゃないんですよ。スポンジもパサパサしているし。でも、ウィーンからやってくる、という特別感がある。今日チョコレートとコーヒーの話をしながら、コーヒーやチョコレートも、そういうものなのかもしれないな、と思いました。
おわりに
お菓子屋さんやカフェのオーナー以外の人にも、学生にも刺さる回でしたね。手間をかけないとできないものが、絶対的にある。あんなふうに、かっこいい大人になれたらな、と思います。Bon Vivantは、北2条西26丁目、円山エリアにあります。ぜひ足を運んでみてください。配信と同時に、番組の雰囲気に合わせたソングリストをSpotifyにアップしています。お届けしたのは映像ディレクターの鈴木謙太郎と、
枯淡珈琲の川筋愛友でした。ありがとうございました。
※ 読みやすさのため、話し言葉を一部整えています。内容は本編音声にもとづきます。聞き取りづらい一部の固有名詞は、確認のうえ表記しています。