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Vol.05 カップ&ソーサーの選択 Vol.05 | 2026.4.14 配信

カップ&ソーサーの選択

ゲスト:和田硝子器店 オーナー・和田亜希子さん

「器を届ける人、器でサービスをする人、かつて雑貨店で器を見ていた人」という3つの視点から、札幌のカフェカルチャーの現在地を語り合います。

■ B-Side NOTES ・かつて北大そばにあった「珈琲野郎」。バッハのコーヒー・カンタータから名をとった、あの大きなマグカップの記憶。

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書き起こし

Vol.5「カップ&ソーサーの選択」本編の会話を、読みやすく編集してお届けします。(聞き手:鈴木謙太郎/川筋愛友、ゲスト:和田亜希子、メッセージ:中川さん・石野智子)

ゲスト・和田亜希子さん/和田硝子器店

鈴木

今回のゲストは、枯淡珈琲のすぐそば、アトリエ森彦の2階にある「和田硝子器店」オーナーの和田亜希子さん。飲食店向けの業務用グラスや器の卸を中心に、ショールームを一般にも開いているお店です。実はこの回、きっかけがあって。僕が枯淡珈琲でコーヒーを飲んでいたら、川筋さんに「人を見て食器を選んでるんだよ」と言われて、驚いたんです。同じ食器を扱っていても、いろんな見え方があるなら、食器のプロの和田さんに聞いたら面白いんじゃないかと。

和田

お店のコンセプトの一つに「人と人、人とものをつなぐコネクターの役目でいたい」というのがあって。枯淡珈琲でこのグラスがいいなと思った方が「どこで買ったの?」とお店の方に聞いて、うちを紹介してもらう。そこで会話が生まれて、循環していけばいいなと思っているんです。

カフェが個性的になった時代

和田

昔は、アンティークばかりのコーヒー店、白磁の工業製品を扱う店、と分かりやすかったんですけど、今は本当に千差万別で。タウン誌のカフェ本をめくると、みんなコーヒーカップが違う。SNSの集客を意識すると、器からも個性を発信するようになったんですね。最近は各メーカーがラテカップを作るようになりましたけど、昔はラテカップという商品名自体がなかったんです。ラテアートがメニューに取り上げられるようになってから生まれたもので。

鈴木

その最たるものが、ワイングラスでコーヒー、ですよね。

和田

私が20代でこの業界に入った頃は、まさかワイングラスにコーヒーを入れるなんて、と。ハリオさんが耐熱のワイングラス型を作っているくらいだからニーズはあるんですけど、実際に提供しているお店の多くは耐熱じゃない普通のワイングラスで。冷えた状態に熱いものを入れると温度差で割れるので、90度くらいで入れているはずなんです。ワイングラスの機能は、味わいより香りを感じさせること。コーヒーもお茶も、それは同じなのかもしれません。

鈴木

ダブルウォールで飲むお店も増えましたね。僕は事務所でボダムのダブルウォールを使っていますけど、あれは書類が濡れない、という機能で選んでいて(笑)。

メッセージ ― 中川さん(Pastoral・帯広)

中川

帯広で雑貨店Pastoralを営んでいます。器を選ぶ基準は「日常の中で、あまり気を使わずに使えること」。比較的、業務用のものや、業務用の雰囲気を感じる器を選ぶことが多いです。スタッキングができたり、少々雑に使っても割れなかったり。海外製品はスタンプが適当に押されていたりして、そこに愛嬌がある。自分が愛用しているのは、影響を受けたカフェのオリジナルの白いシンプルなカップ&ソーサー。コーヒーが一番美味しく感じるのは、シンプルな白い磁器のコーヒーカップ、これに限ると思っています。

鈴木

中川くんはD&Department時代の仲間で。彼が影響を受けたと言っていたのは、SHOZO CAFEなんです。ちなみに、枯淡珈琲のカップは、鎌倉のカフェ・ヴィヴモン・ディモンシュのオリジナルカラーですよね。

白磁と、選び方

鈴木

和田さんが今気になっているのは、白磁なんですよね。

和田

白と言ってもいろいろあって。アンミカさんの「白って200色あるんです」じゃないですけど、マット調があったり、ツヤを抑えたものがあったり。カフェにいろんな器がある中に、白磁が一つあるだけでも料理が映える。コーヒーが一番綺麗に見えるのは、やっぱり真っ白なんです。私自身の選び方は、かなりフィーリングで、「可愛い顔」と、あとは何cc入るか、くらいで。普段は、小樽の作家・キムラヤさんのマグを長年使っていて、日曜だけは、大阪の作家・岩崎龍二さんの、白地に青いグラデーションのカップに変えているんです。

鈴木

カップも大事だけど、カトラリーも大事だと聞いて、和田さんのところで欲しくなっちゃって(笑)。

和田

カトラリーが変わると、食卓全体の表情が変わるくらい重要で。いいカップを使っていても、カトラリーがあれっというものだと台無しになる。店内のしつらえ、照明、音楽、全部のイメージをはっきり持って選ぶのが大事だと思います。

コロナと、器が心を豊かにすること

和田

コロナの時、飲食店のお客様と話していて「食器ってこれから売れていくのかな」とボソッと言ったら、ある方が「器もファッションと同じ。気分が変わると、また器に目が行くから」と言ってくれて。実際、おうち時間が増えて、一般の方が高級なグラスを一脚、という需要が出たりして。器って、本当にその人の心を豊かにする効果があると思うんです。

鈴木

コーヒーもそうですけど、嗜好品ってなくならない。その嗜好品を楽しめる余裕を、いかに持つか、ですよね。川筋さんは、人に安らぎを与えているんですよ。

石野智子さんのコメント ― 情報デザインとコーヒー

石野

フリーアナウンサーの石野智子です。カフェに行って、ぼーっとする時間も、考え事をする時間も好きですが、もっと好きなのは、店員さんにこだわりを聞くこと。豆の選び方、焙煎、空間や家具のこだわりなど、それぞれのカフェに込めた思いを聞くのが大好きです。

鈴木

石野さんは情報デザインを学んでいた人で。情報デザインって、最後にどういう結論を出すかから逆算して考える学問なんです。川筋さんが「美味しいコーヒーを作るために、導線を綺麗に整えたかった」と言っていましたよね。あれ、まさにデザインで。コーヒーもデザインも同じなんだなと。というわけで、次回は「カフェとデザインの緊密な関係」をお届けします。

B-Side NOTES ― 珈琲野郎(北大そば)

鈴木

今回も、もうなくなってしまったお店の話を。かつて北海道大学のそばにあった「珈琲野郎」。店名はバッハの「コーヒー・カンタータ」から取っていて——コーヒーに夢中になった人が身を持ち崩していく、という戯曲なんです。実は、僕がピチカート・ファイヴの野宮真貴さんと作っていた「Small Trip」の最終話で紹介させてもらったお店で。印象的だったのが、オープン初期に作ったというオリジナルの、ものすごく大きなマグカップ。サイフォンで淹れた濃いめの深煎りを、たっぷりと。もう10年以上前ですが、その時に店主の方が「みんな忙しすぎて、こんなにたくさんコーヒーを飲まないわよね」とおっしゃっていて。カフェで過ごす時間の密度が、あの頃と今とでは変わってきている。あの大きなマグカップとともに、そんなことを思い出します。せめてその時間だけは、少し時計の針を止めていただけたらな、と思います。

おわりに

川筋

楽しかったです。収録が終わってからも盛り上がっちゃって。昨日、お客さんが「喫茶店が今、レストランになっている」といいことを言っていて。ぱっと来てコーヒーを飲むより、美味しいスイーツを食べたところにコーヒーがある、という考えの方が多いんじゃないか、と。スイーツありきの喫茶店になってきている、という。

鈴木

時間に対する価値が、低くなっている気がします。フードが悪いんじゃなくて、時間の使い方が雑になってきている。和田さんは、また2回目に出ていただきます。和田硝子器店は、南1条西12丁目、アトリエ森彦の2階です。ぜひ足を運んで、手に取って選んでみてください。お届けしたのは映像ディレクターの鈴木謙太郎と、

川筋

枯淡珈琲の川筋愛友でした。ありがとうございました。

※ 読みやすさのため、話し言葉を一部整えています。内容は本編音声にもとづきます。聞き取りづらい一部の固有名詞は、確認のうえ表記しています。