自家焙煎ってお店にとって何なんだろう?
出演:鈴木謙太郎(映像ディレクター)× 川筋愛友(枯淡珈琲)
テーマは「自家焙煎ってお店にとって何なんだろう?」。自家焙煎を掲げるお店の哲学と、札幌で年々増え続ける自家焙煎店の背景について、カウンター越しに語り合います。ボイスメッセージやリスナーからの声も交えながら。B-Sideではパリの老舗「MARIAGE FRÈRES」の話も。
書き起こし
Vol.3「自家焙煎って、お店にとって何なんだろう?」本編の会話を、読みやすく編集してお届けします。(出演:鈴木謙太郎/川筋愛友、メッセージ:ONIYANMA COFFEE・高橋、札幌カフェマップ:柴田成美)
川筋さんにとって、焙煎とは
今日のテーマは「自家焙煎って、お店にとって何なんだろう?」。最近、自家焙煎のお店が一つの記号のように増えていて。焙煎を生命線にしている川筋さんに聞きたいんですけど、川筋さんにとって焙煎とは。
私はどちらかというと、カフェをやりたい気持ちより、焙煎したい気持ちが強いんです。角が立つかもしれないけど、コーヒー豆を焼きたいから店をやっている。豆を売る手立てとして店がある、くらいの感覚で。焙煎が楽しくて仕方ないんです。もともと、美味しいコーヒーをたどっていった時に、その導線を綺麗に作りたくて。ドリップも要だけど、焙煎がめちゃくちゃ大事だと気づいて、自分でコントロールして自分の味を作りたかったんです。
手網焙煎から、直火式へ
最初に経験したのは森彦の時で、自宅で網でカラカラやったのが初めて。手網でやりすぎて、深煎りまでやると火災報知器が鳴るんだと知って(笑)。今は、ラッキーコーヒーマシンの直火式・4キロの焙煎機を、お店とは別に借りた部屋で使っています。これから焙煎する人には、手網焙煎を一度やってほしいんです。豆がどうやって膨らむのか、メイラード効果で色が変わっていく様子が、目に見えてわかりやすいので。あれを通るのと通らないのとでは、全然違うと思います。
自家焙煎が増えている背景
自家焙煎、増えている実感ありますか。
増えていると思います。コロナ禍で、自宅やキャンプで焙煎できる機会が一気に増えた気がしていて。キャンプ場で焙煎できるグッズも増えましたし。あと、焙煎機自体が小型化して、電気式など煙が少ないものを使えば、省スペースでもできるようになった。それも背景にあると思います。
メッセージ ― ONIYANMA COFFEE 高橋さん
札幌に3店舗、沖縄に1店舗を運営するONIYANMA COFFEEの焙煎士、高橋です。愛用している焙煎機はプロバットの現行モデルP12で、フルカスタムしていて、温度センサーが多かったり、ドラムの回転数が調整できたり。焙煎におけるこだわりは、実はあまり持たないようにしていて。うちで扱うスペシャルティコーヒーは、豆や生産者さんにフォーカスが当たったほうがいいと考えているので、焙煎士である僕のエゴはなるべく反映させない。ローストのエラーを出さない、豆の個性を最大限引き出す、お客様に伝わりやすい美味しさである——この三つがクリアされていれば合格にしています。評価基準にも個人の主観はあまり使わず、焙煎の公式大会の基準を共通言語にしています。市内で好きな自家焙煎店を一つあげるなら、NODEさん。豆のラインナップが魅力的で、あのラインナップは根澤さんにしか作れないなと。
スペシャルティと「美味しかったらいい」
スペシャルティコーヒーブーム、どう見ていますか。
それはそれでいいと思っています。うちもしれっとスペシャルティなんですけど、正直、スペシャルティがどう、コモディティがどう、という見方をしていなくて。平たく言えば「美味しかったらいいじゃん」という人間なので。焙煎するときも、豆によって含水率や硬さが違うので、近しいものを選んで焼くのか、揃えてから焼くのか、店によります。西11丁目のベーシックさんは、水洗いして乾かしてから焙煎しているはずで、チャフがグッと減るんです。
中国・雲南のダブルファーメンテーションも流行りましたよね。僕はラテで飲んでびっくりしました。コーヒーというより紅茶が近い、果実感がすごくて。
今月のコーヒーとスイーツ
今月のスイーツは、桜餅のモンブランタルト。うちで年間通して一番人気のスイーツなんです。コーヒーは「春眠暁」というブレンドで、エチオピアとマンデリンをベースに5種類をブレンドした深煎り。だいぶ飲みやすい深煎りで、エチオピアが入っているのでほんのり遠くに酸味がありつつ、マンデリンの香りがしっかりしています。
いただきましたけど、美味しかったです。マンデリンの香りの存在感がすごくて、酸味が苦手な人にも飲みやすい。桜餅の食感と、桜色と若葉色の色味もよくて、あんこが苦手なアナウンサーも「これは食べられる」と食べていました。
札幌カフェマップの終了 ― 柴田成美さんのコメント
昨日の放送で、僕が途中から3年ほど引き継いでいた「札幌カフェマップ」が終了しました。川筋さんとの出会いのきっかけも、この番組でした。誰よりも番組を大事にしていた、UHBアナウンサーの柴田成美さんからコメントをいただいています。
札幌カフェマップ、3月14日の放送で最後でした。「札幌カフェマップ」と銘打ってから5年、2021年から始まって、本当にいろんなカフェに行かせてもらいました。実はこの企画が始まる前、何かマップを作りたいという話があって、私が「カフェのマップはどうか」と提案したのが採用されたんです。だから、自分のアイデアの段階から関われたのがすごく嬉しくて。お客さんとして行ったら聞けないような、店主自身のことや、なぜカフェを始めたのか、という話も色々聞かせてもらいました。枯淡珈琲も大好きです。入った瞬間に、その人の世界観が詰まっていて。同世代の方が、自分の好きな空間で経営しているのが、尊敬もするし羨ましくて、刺激をもらいました。ぜひ今度、ポッドキャストにもお邪魔できたらなと思います。
B-Side NOTES ― 紅茶とマリアージュフレール
今日は自家焙煎の話をたくさんしたので、B-Sideは紅茶の話を。柴田さんのコメントは、実はうちの事務所で撮って、マリアージュフレールのマルコポーロを淹れて差し上げたんです。マリアージュフレールはパリ発祥の老舗で、銀座に2店舗、サロン・ド・テになっていて。そこで飲んで衝撃だったのが、「ミルクティーの味がします」と言われて飲んだウーロン茶で。ミルクを使っていないのにミルクの味がする、あれは魔法ですね。札幌でもマリアージュフレールが飲めるお店が何軒かあって、北区のカンナさんや、オムレツの「うふ」さん——うふさんはカルボナーラがとんでもなく美味しいんです。
私は、札幌にかつてあった「ルマン・イル・ソレイユ」さんが憧れで。うちのお店は、あそこになる予定だったくらい衝撃を受けたかっこよさで。何回も足を運びました。テオドーの、ピンクや黄緑の缶も素敵でしたね。今はもうない、幻のお店ですけど。
おわりに
お店として目指しているのは、何ですか。
非日常の中にあるお店より、日常の中にあるお店をずっと作りたくて。「近くに枯淡珈琲があるから行ってみよう」「なんとなく近くに来たし」くらいでいいと思っているんです。構えるより、毎日飲みたいくらいのコーヒーでありたいなと。
配信と同時に、番組の雰囲気に合わせたソングリストをSpotifyにアップしています。お店に合わせて、ジャズから選んでいます。お届けしたのは映像ディレクターの鈴木謙太郎と、
枯淡珈琲の川筋愛友でした。ありがとうございました。
※ 読みやすさのため、話し言葉を一部整えています。内容は本編音声にもとづきます。聞き取りづらい一部の固有名詞は、確認のうえ表記しています。