カフェのフードメニュー
出演:鈴木謙太郎(映像ディレクター)× 川筋愛友(枯淡珈琲)
テーマは「カフェのフードメニュー」。心惹かれるあのメニューの裏側について、3名のカフェオーナーから寄せられたボイスメッセージをもとに語り合います。一皿の強いメニューがお店のアイデンティティになること、そして枯淡珈琲のフードのこと。カウンター越しの、フードをめぐる話。
書き起こし
Vol.2「カフェのフードメニュー」本編の会話を、読みやすく編集してお届けします。(出演:鈴木謙太郎/川筋愛友、メッセージ:中山さん・大森さん・カナ)
カフェのフードメニュー、増えている
第2回のテーマは「カフェのフードメニュー」。最近、インスタを見ていても、フードメニューのプライオリティがめちゃくちゃ高くなっている気がして。川筋さん、どう感じていますか。
もう「みんなそんなに頑張らないで」と思うくらい(笑)。フードがお客さんを引っ張っているなと、本当に感心しています。よくあんなに作れるなと。うちは焼き菓子やトーストメニューが中心で、そんなに数は多くないので。
メッセージ ― 中山さん(検討)
合同会社フェンリルビバレッジの中山です。手稲区前田のコーヒー豆直売所と、中央区大通西18丁目で「検討」という喫茶店を営んでいます。昔からある商品を分解して、その店舗なりの解釈で再構築するアプローチが好きで。ネオクラシックとでもいうんですかね。例えばナポリタンは、日本で生まれたもので定義がないから面白い。生クリームを入れたり、うちは自家製ベーコンにコリアンダーやナツメグ、オールスパイスを合わせてオリジナルソースにしています。商品にいろんな方向性がつけられるということは、自店のコーヒーとも新しい合わせ方ができる。隠し味のジャムに合わせて浅めのコーヒーを、スパイスを効かせたらスマトラを、と。各店で食べ比べのスタンプラリーをやってみたり、いろんな楽しいことができるんじゃないかなと思っています。
ペアリングの考え方を、みんなでアイデアとしてシェアしていったらいいんじゃないか、というお話で。さすが知識人だなと。
枯淡珈琲のフードと、あんこの話
うちのフードは、正直、私が食べたいもの。自分が好きなものじゃないと、お客様も好きになれないかなと。実は、あんこメニューが多いんですけど、私、もともとあんこが嫌いだったんです。「なんで苦手なんだろう」と考えたら、市販のは甘すぎるんだ、という結論に至って。じゃあ甘くないのを作ればいい、と自分で炊いたら「美味しいじゃん」となって。それであんこメニューが増え気味なんです。コーヒーに合うフードを選ぶ時もあるし、逆に、癖の強いコーヒーを仕入れた時に「これを飲ませるには何を合わせるか」と考える時もあって、ケースバイケースですね。
メッセージ ― 大森さん(NOA COFFEE AND SANDWICH)
NOA COFFEE AND SANDWICHの店主、大森です。南13条西7丁目の市電通りに面しています。名前の通りサンドイッチがメインで、毎朝自家製で焼いたパンを使っています。もともとニュージーランドのサンドイッチ屋で働いていたので、日本では馴染みのない具材や、癖のあるソースで組み立てていて。おすすめは、サワードウで作るビーフ&ピクルス——アメリカンでパンチのある味で、コーヒーよりビールが合うんじゃないかと。もう一つは、フォカッチャのモルタデッラ&ピスタチオ。イタリアハムのモルタデッラに、バジルペストと粒状のピスタチオ、最後に蜂蜜がかかって、癖になる味に。カフェは、空間とそこにあるご飯がどれだけマッチするかだと思っていて、その雰囲気を引き立てるのは店主やスタッフの人だと思うので、日々それを意識しています。
モルタデッラにバジルとはちみつを合わせちゃうんだ、という驚きで。甘じょっぱいのに全部が喧嘩しない、バランスの良さにびっくりしました。お店もかっこよくて、異文化の雰囲気があって。
メッセージ ― カナさん(北海道かもめ食堂・千歳)
千歳市で「北海道かもめ食堂」を始めて14年目の店主、カナです。メニューを試作するのと同じくらい時間をかけているのが、ネーミングなんです。例えば「ポークステーキとチキンカツのお姫様御前」というのがあって。男性が「お姫様御前いいですか」と言ってくださって、「王子様も大丈夫ですよ」と返したら笑いが起きたり。メニュー表を開いた時に「全部美味しそう、迷っちゃう」と言われるのがすごく嬉しいので、ファーストインプレッションとして、ネーミングにも力を入れています。
とんだ変化球が飛んできましたけど、大好きなお店で。道東の行き帰りに思わず寄ってしまう。ボリュームたっぷりのご飯を出してくれるお店です。
「余韻」と「余白」― ブレンドの名前
お客さんから、枯淡珈琲の「余韻ブレンド」と「余白ブレンド」、名前の由来を知りたい、という質問が来ています。
飲んだ時に、口の中に心地よい余韻が広がるな、と自分で淹れながら感じたので「余韻」に。余白は逆に中煎りのブレンドで、爽やかで、まだ余白があってスルスル飲める、もう一杯いけそう、という感じから。メニューって、お客さんとのコミュニケーションツールだと思っていて。枯淡珈琲という世界観を意識しつつ、極力語りすぎないように、想像をお客様に委ねるようにしています。
「らしさ」って、実はお客様が決めるものですよね。縦書きの明朝体が、穏やかで古風なイメージを作るけど、閉店間際の枯淡珈琲に行けば、よく喋る川筋さんに会えますからね(笑)。
B-Side NOTES ― イナフ(enough)
今回も、閉店してしまったお店の話を。90年代、札幌のカフェが盛り上がっていた時期を語る時に外せない、伝説的な一軒「イナフ(enough)」。南3条西2丁目のビルの地下から2階へ移って、しばらくして閉められたんですけど。当時のカフェは、イームズのチェアにポール・ヘニングセンのライトシェード、というミッドセンチュリー家具で固めるのが記号で、イナフはその走りでした。この記号化って今もあって、最近多い白いインテリアの韓国スタイルもそうですよね。一つそういうお店ができると、ざっと増えていく。イナフといえばタイ風チキンカレーで、「カフェ飯」という言葉が生まれたのは、たぶんこのくらいの時期じゃないかなと思うんです。
おわりに
お食事系をいっぱいやっているカフェは、本当に尊敬します。土地によっても違うのかなと思っていて。旭川でカフェをやっている友人の話を聞くと、地方のほうが食事を求められるみたいで。利用される方の生活のリズムが、都心部とは違うんですよね。
正解は特にないと思いますけど、場所によって違うな、と取材を通して感じていました。配信と同時に、番組の雰囲気に合わせたソングリストをSpotifyにアップしています。お届けしたのは映像ディレクターの鈴木謙太郎と、
枯淡珈琲の川筋愛友でした。ありがとうございました。
※ 読みやすさのため、話し言葉を一部整えています。内容は本編音声にもとづきます。聞き取りづらい一部の固有名詞は、確認のうえ表記しています。