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Vol.15 ロウソクを灯すという選択 Vol.15 | 2026.8.29 配信

ロウソクを灯すという選択

ゲスト:池田佳那さん(キャンドル作家・カリグラファー/綴 -TSUZURU-・@__tsuzuru__)

今回のゲストは、キャンドル作家・カリグラファーの池田佳那さん。ブランド「綴 -TSUZURU-」で和ロウソクを手掛けています。魅力は、素材をとことん北海道産にこだわること。地元の木の端材を芯に、玉ねぎの皮や藍、薪ストーブの煤を色に——役目を終えた身近な恵みを、一本ずつ手仕事で灯りに変えていきます。コーヒーと同じで「わざわざ灯す時間」という小さな贅沢を、静かに空間に添えてくれる。手仕事の灯りをめぐる話を、カウンター越しに聞きました。

■ B-Side NOTES ・札幌「pippin」(@pippin.sapporo)

※ Spotifyアカウントなしでも30秒お試し再生できます。続きは各プラットフォームで。

書き起こし

Vol.15「ロウソクを灯すという選択」本編の会話を、読みやすく編集してお届けします。(聞き手:鈴木謙太郎/川筋愛友、ゲスト:池田佳那)

ゲスト・池田佳那さん(綴 -TSUZURU-)

鈴木

今回のゲストは、キャンドル作家・カリグラファーの池田佳那さん。ロウソクとカリグラフィーのブランド「綴 -TSUZURU-」を手掛けていらっしゃいます。川筋さんとは、もともとお知り合いなんですよね。

川筋

らみくんが繋いでくれたんです。前回のゲスト(中村来実さん)が、「二人はきっと気が合うだろう」と。取引とか目的があったわけじゃなくて、単純に繋いでくれた、という感じで。

鈴木

利害関係のない出会いって、いいじゃないですか。僕らもそんなのばっかりですけど(笑)。

今月のコーヒーとスイーツ

鈴木

配信は8月29日ですが、もう少しで9月。今月、枯淡珈琲のスイーツは。

川筋

かぼちゃプリンです。去年も出して、毎年すごく人気で。このメニューからファンになってくださった方もいるくらい。北海道の栗かぼちゃを使って、表面は絞った栗かぼちゃをあぶって、香ばしくしています。トッピングは、塩を効かせた甘じょっぱいものや、えびすかぼちゃのアイスも。かぼちゃアイスと小豆とケーキの3点盛りにされる方が多いですね。

鈴木

プリンアラモードみたいで豪華ですね。実は僕、以前ちょっと検査入院をして、退院後にへとへとでたどり着いた枯淡珈琲で食べたのが、あのキャロットケーキで。すっかり思い出の味になっています。

和ロウソクという選択

鈴木

いま渡していただいた、これが和ロウソクなんですね。一般的なロウソクとの違いは。

池田

全部、日本のものでできていて、まず芯が違うんです。い草の髄、灯芯草を和紙にくるくる巻いて、最後に糊で固定して芯にする。そのうえから、櫨(はぜ)の木の実から採れるロウを、手で少しずつ太くしていって、一本のロウソクができます。海外の方が「ジャパニーズキャンドル」と言うと、たぶんこの和ロウソクをイメージすると思います。

鈴木

一般的なロウソクは、素材が違うんですか。

池田

一般的なものは、パラフィンという石油ベースのロウが多いです。和ロウソクは、炎は大きいのに煤がほとんど出なくて、垂れずに、最後まできれいに燃え切る。炎にグラデーションが見えて、根本の青いところまで見えるんです。日本のロウソクの始まりは蜜蝋で、高価でごく一部の人しか使えなかった。明治頃に和ロウソクが普及して、その後は石油ランプに押されて、だんだん衰退していった、という流れですね。

北海道の素材を灯す

鈴木

北海道の素材を使っているそうですね。

池田

パチパチと音が鳴る芯を、北海道の木材で作ってもらっています。東川の今野さんという木工作家さんに、黒松・楓・春楡・山桜の4種類を、芯用に加工してもらって。木の種類によって、音も炎も違うんです。私のほうで燃焼実験を繰り返して、この幅なら燃焼しそう、という厚みを決めて、カットをお願いしています。作品を作って余った端材を芯にしてもらうので、無駄なく木材を使う、循環するロウソクみたいな感じで。

鈴木

色をつける顔料にも、北海道のものを。

池田

玉ねぎの皮からオレンジ、藍から水色、薪ストーブの煤からグレー。煤は乳鉢ですりつぶして、ふるいにかけて、細かいものをロウに混ぜます。とどまつの葉やラズベリーは、あまり色が出ずに失敗して。手に入ったものを試してみる感じで、植物や食材によって性質が違うから、何回か試して合わせていきます。玉ねぎの皮も、煮沸して草木染めに近いやり方で色を出すので、匂いは残らないんです。

川筋

コーヒーの豆でも、色が出そうですね。うちとのコラボでもできそう。

鈴木

コーヒーもロウソクも、嗜好品という点で似ていますよね。わざわざ灯す時間を作る、わざわざコーヒーを飲む時間を作る、というところが。

ロウソクを灯す機会

鈴木

ロウソクって、どんな時に灯すものなんでしょう。夏至のキャンドルナイトやクリスマスとか、特別な機会のイメージが僕にはあって。

池田

私は、冬の早く起きた朝、まだ薄暗い時に灯すのが好きです。ちょっと特別感があって、いい一日になりそうだな、という始まりがあって。あとは、半身浴をしながらお風呂で灯したり。真っ暗にして、よりリラックスできる気がして見ています。

鈴木

今は蛍光灯すら減って、ほとんどLEDになって、直線的な灯りが増えていますよね。ロウソクの光との違いは、どう考えていますか。

池田

そもそも私、LEDのような明るい電気が苦手で、家ではあまりつけないんです。ロウソクのほうが、炎の揺らぎや、光そのものがすごく柔らかい。LEDは一方向に飛んでいくけれど、炎はそうじゃないので。

鈴木

ロウソクの明かりって、儚さをどこかで感じて、ロマンチックだなと思うんです。いつか終わるのが見えているからこそ、というか。喫茶店とも合いますよね。生活のど真ん中ではない、一つ贅沢な過ごし方として。

手仕事として伝えたいこと

鈴木

一つひとつ手で作ることに、こだわっている理由は。

池田

和ロウソクは、そもそも手でしか作れないんです。細長い棒くらいのものからロウをすくって、手掛けをして、一本一本太くしていく。大変ですけど、灯した時の明かりが本当に美しくて。日本の伝統工芸でもあるのに、ご存じない方が多いので、それを伝えていきたくて。ワークショップでは、実際に手掛けを体験してもらって、自分で作った明かりを灯して癒される、という行為を楽しんでもらいたいなと思っています。

川筋

すごくコーヒーと似ています。技ですよね、本当に。

小樽のアトリエ、これから

池田

9月から、小樽にアトリエ兼お店をひらきます。古道具屋さんと一緒に、古道具と古い本と古い明かりをテーマにした二階建ての建物で。制作をしながらロウソクの販売もして、その空間を楽しんでもらう形です。9月6日から、シルバーウィークにかけて。11時から17時まで、予約なしでふらっと来ていただけます。小樽の水天宮のすぐ近く。詳しくはInstagramのアカウントを見ていただくのが一番です。

B-Side NOTES ― pippin(ピピン)

鈴木

今回は、僕にとって札幌の名店、pippin(ピピン)を紹介します。店主のほのかさんとは、僕がD&DEPARTMENTにいた頃、札幌店のテナントに入っていただいていて。実はそれ以前、狸小路の名店「グリ」をご夫婦でやっている理恵子さん、いまニセコで和菓子を作っている松風さんと、三人が揃っていた時期があって。ほのかさんは、もともと札幌の伝説的な古民家カフェ「サクラムーン」にいらした方なんです。僕が若い頃の、ロマンチックでアンティークな、すごいカフェで。

鈴木

pippinといえば、小鉢をたくさん揃えた定食スタイル。お肉、お魚、両方、と選べる。この定食スタイルを札幌でここまで馴染ませたのは、pippinじゃないかと思っていて。D&DEPARTMENTを離れてから、一時期、円山の裏参道でお弁当屋さんをやっていた時期があって——ちょうどコロナの頃で、実はその時、お弁当屋さんで働いていたのが僕の母なんです。同じクオリティのお弁当を、何度も買いに行きました。

川筋

先日、行ってきました。おいしかったです。食事は取らずに、ドリンクとデザートにしたんですけど。

鈴木

お店の大きなテーブルは、SHOZO CAFEから譲られたものなんですよ。いまのカフェのスタイルを作ったと言っても過言じゃない名店で。pippinの料理は、職業柄いつも「何を使っているんだろう」と考えて食べる川筋さんでも、いい意味で分からないと言う。複雑なのに一つにまとまっていて、それでいて家庭料理なんですよね。ワークショップもやられているので、その秘密を知りたい方は、ぜひ。

川筋

梅仕事のワークショップとか、行きたいんです。

おわりに

鈴木

今日は、川筋さんのお友達をお招きしました。パッと見は物静かそうだけど。

池田

初対面で「読書が好きそう」ってよく言われるんですけど、全然アクティブ女子なんです(笑)。

川筋

私も似ていて。物静かそうに見えて、蓋を開けたらバリバリの運動部、みたいな(笑)。

鈴木

らみくんが繋いだ意味が分かりました(笑)。配信と同時に、番組の雰囲気に合わせたソングリストをSpotifyにアップしています。リンクはホームページやSNSから。SAPPORO CAFE NOTES、お届けしたのは映像ディレクターの鈴木謙太郎と、

川筋

枯淡珈琲の川筋愛友でした。ありがとうございました。

※ 読みやすさのため、話し言葉を一部整えています。内容は本編音声にもとづきます。聞き取りづらい一部の固有名詞は、確認のうえ表記しています。