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Vol.12 カフェの空気を可視化するアート Vol.12 | 2026.7.18 配信

カフェの空気を可視化するアート

ゲスト:モビール作家・イラストレーター jobin.さん(@jobin55)

空気に揺れて、そのたびに形を変えるモビール。枯淡珈琲の焙煎機をモチーフにした作品を手がけるjobin.さんと、「空気を可視化する」作品の設計、カフェという空間で作品が果たす役割まで、カウンター越しに語り合いました。

■ B-Side NOTES ・栗山町・菅野牧園

※ Spotifyアカウントなしでも30秒お試し再生できます。続きは各プラットフォームで。

書き起こし

Vol.12「カフェの空気を可視化するアート」本編の会話を、読みやすく編集してお届けします。(聞き手:鈴木謙太郎/川筋愛友、ゲスト:jobin.)

ゲスト・jobin.さん

鈴木

今回のゲストは、札幌を拠点に活動するモビール作家・イラストレーターのjobin.さん。7月18日から、街歩き型の回遊展「Tempo」が始まっていて、御幸通り商店街界隈の5つの店舗に5人のアーティストがコラボするイベントです。jobin.さんの作品は、枯淡珈琲で8月2日まで展示されています。川筋さんとは、旧知の仲だそうで。

川筋

私がアトリエ森彦でイベントを担当していた頃、マルシェに出店されていて。それが出会いでした。

鈴木

月並みな質問ですが——jobin.って、どこから来た名前なんですか。

jobin.

たまたま入ったCDショップで、すごく綺麗なジャケットのCDがあって。坂本龍一さんが初めてボサノバのアルバムを作った、というもので。聴いてみたらすごく良くて、ブックレットに「ボサノバをつくったとされるアントニオ・カルロス・ジョビンに捧ぐ」と書いてあった。アントニオもカルロスも僕の世代では有名人なので、ジョビンだけいただいた、という感じです。あまりに「ジョビンさんですか」と聞かれるので、慌ててあとからボサノバを聴くようになりました(笑)。

鈴木

実は、いま枯淡珈琲で流れている曲がそれで。3時間もいると一度は流れる、アントニオ・カルロス・ジョビンの曲を選んでいるんです。ボサノバの柔らかい空気感、作品にぴったりですね。

焙煎機のモビール

鈴木

枯淡珈琲には、jobin.さんのモビールが常設されていますよね。この焙煎機のモビール、川筋さんの焙煎機がモデルなんですか。

jobin.

オーダーで作らせていただきました。写真だけを見て、比率を見ながら、何回か作り直して。実物を知っているかどうかで、できが変わってくるんです。似たような他の焙煎機の写真も見比べながら作りました。奇しくもこういう作り方ができるのは、過去に建築の仕事をしていて、図面を見て立体化する感覚があったからかもしれません。

鈴木

頭の中で、この線が円になって立体になる、と変換しなきゃいけないわけですよね。すごいな。

jobin.

企業さんが作るモビールは、誰でも作れるように計算されていると思うんですけど、僕は実際に釣り合ったところで「ここ」と接着する、というバランスの取り方で。プリンのモビールなら、スプーンがどのくらいの位置に来るのがいいか、と当たりながら作ります。

モビールという表現

鈴木

イラストレーターとしても活動されていますが、絵と立体、どちらが先だったんですか。

jobin.

実は、絵にはすごくコンプレックスがあって。最初は絵の上手い人に描いてもらっていたくらいで。その人と離れ離れになって、仕方なくマウスで描いたりしていました。自分の引く線に納得がいかなくて、脳内ではできているのに、手だと違う。それで、立体ならできるかもと、鉛筆のような線を探して黒い針金を使うようになったのが始まりなんです。だから「なぜ黒い針金を?」と聞かれると、もともと鉛筆の線がスタートだったからで。平面より、空間に描くほうが、イメージ通りにできるんです。

揺れるアートの設計

鈴木

モビールって、空気に揺れて形が変わる、完成形が決まらないアートですよね。どう設計しているんですか。

jobin.

まず針金で形を作って、テグスでバランスの取れるところに吊るして、その様子をしばらく眺めるために放っておく時間があるんです。影の部分を重視するので、影を見て針金の量を決めたり。むしろ、眺める時間のほうが長いくらいで。展示になると、複数吊るした状態で全体のバランスを見ます。本当はインスタレーションが根本的にやりたいことなんですけど、できる場所は限られるので、展示の中でそれができる箇所を探る、という感じです。

鈴木

これって、ある意味インタラクティブなアートですよね。人の動きや空気が、作品を完成させるというか。

jobin.

建築をやっていた中で、「建物ができれば完成ではなく、そこに人がどう入るかが大事」と先生に口酸っぱく言われていて。それが展示でも共通しているんです。空調が強いポジションでは動きすぎないものを、とか、光の回り方で影が増幅するものを、とか考えながら。最近はLEDのハンドライトを当ててもらって、さらに変化させる形も試しています。

カフェという空間と、二度と同じ姿がないこと

鈴木

モビールが動くって、そこの空気が可視化された、という考え方もできますよね。

jobin.

究極を言うと、動きも含めて、二度と同じ姿がないんです。その瞬間、その時だけのもので、全部が偶然で。

鈴木

カフェという空間そのものも、同じ時間は二度と来ないですよね。だからマッチするんだ。偶然って、美しいですよね。

jobin.

空間展示で好きなのは、ある作品を見ているAさんを、またBさんが見て面白い、という掛け合わせが生まれるところで。カフェのような不特定多数が出入りする場所だと、それがより起きるんです。

鈴木

影なんて、普段は意識しないですもんね。川筋さんのお店は、影の作り方が上手だと思っていて。

B-Side NOTES ― 菅野牧園(栗山町)

鈴木

今回は、栗山町にある「菅野牧園(かんのぼくえん)」を紹介します。オーナーの菅野義樹さんとの出会いは、少し特別で。僕がNHK札幌で、ピチカート・ファイヴの野宮真貴さんと一緒に作っていた「Small Trip」という番組を、菅野さんがご覧になって、メッセージをくださったのがきっかけなんです。

鈴木

菅野さんは福島県飯舘村のご出身で、東日本大震災の原発事故を受けて北海道へ移住された方です。栗山町で黒毛和牛の繁殖牧場を始められて、その後、ファームレストランをオープン。出産後、繁殖牛としての役目を終えた経産牛を、感謝していただく——命を無駄にしない取り組みで、コープさっぽろ農業賞の審査委員長特別賞を受賞されています。僕は、映像で関わっているTNOC hokkaidoというアパレルの夏のブランディング映像の撮影で、この牧場にお世話になって。栗山の、丘の起伏や農地の描く模様が本当に綺麗で、美瑛とはまた違うダイナミックさがあるんです。

川筋

菅野さんご夫婦が、枯淡珈琲に来てくださったことがあって。お名前を鈴木さんから聞いていたので、「あの方だ」となりました。とても朗らかな雰囲気の方でした。

おわりに

川筋

jobin.さんの頭の中、どうなっているんだろうとずっと思っていました。絵が描けない、というのが意外で。だからこの黒い線なんだ、と腑に落ちました。

鈴木

いいストーリーを持った、素敵な方にどんどん出会っていきたいなと思います。jobin.さんの展示「Tempo」は、枯淡珈琲で8月2日まで。ぜひ足を運んでみてください。配信と同時に、番組の雰囲気に合わせたソングリストをSpotifyにアップしています。リンクはホームページやSNSから。お届けしたのは映像ディレクターの鈴木謙太郎と、

川筋

枯淡珈琲の川筋愛友でした。ありがとうございました。

※ 読みやすさのため、話し言葉を一部整えています。内容は本編音声にもとづきます。聞き取りづらい一部の固有名詞は、確認のうえ表記しています。